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2017年5月26日金曜日

「深層学習による自然言語処理」を書きました

5/25に,IBMの坪井さんと,NTTの鈴木さんと書いた「深層学習による自然言語処理」というタイトルの本が発売されました. 特に昨年1年間は,土日や夜をかなり潰したので,ようやく発売されたなぁと感慨深いものがあります. 最終稿の直前で,図を差し替えたり,変な文が見つかったりしたので,まだ変な誤植があるかもしれませんし,読みにくいところもあると思います.

2011年12月31日土曜日

今年読んだ本5選

読書記録をMediaMakerというところにつけているのですが,今年は30冊くらい読んだみたいです.実際は,ここに書いてないのもあるので,もう少しあるかな.今年読んだ本のベスト5を紹介します.

アジャイルサムライ−達人開発者への道−アジャイルサムライ−達人開発者への道−
Jonathan Rasmusson 西村 直人

オーム社 2011-07-16
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アジャイル開発に関するエッセンスをとてもよく凝縮し,それでいて実例や対話を交えて極めて明快に書かれています.訳本なのに非常に日本語も読みやすく,すんなり読めます.「小さなチーム」だとか「職能横断型チーム」だとか,普段自分が重要視していることも書かれていました.リソース(お金や時間)と顧客と不確定要素の関わる仕事に従事する人全員にお勧めします.例えば,締め切りがあって,査読者や審査員や指導教官がいて,実験が上手くいかないかもしれない,というような問題を抱えている人種の人達のことです!
事実を誤魔化さない,上手くいかないことは上手くいかない,それをどうマネージして最善を尽くせるか.

IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみるIBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみる
スティーヴン・ベイカー 金山博・武田浩一(日本IBM東京基礎研究所)

早川書房 2011-08-25
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IBMのグランドチャレンジでクイズ王にコンピュータで勝利した,プロジェクト・ワトソンの裏側のノンフィクション.クイズに答えるというタスクがいかに難しいかを人に説明しようとすると,なかなかこれが難しい.この本を読めばそれが非常に明快にわかります.自然言語処理に従事する身からすれば,無謀とも言えるチャレンジ,これがいかに始まったか,どうしてGOが出たのか,どういう覚悟でこのプロジェクトに挑んだのか.
そして何よりも,この本の書きぶりが素晴らしい.まるで小説でも読んでいるかのような書きぶりです.純粋に読み物としても面白いです.

デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方
奥出 直人

早川書房 2007-02
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製品開発をどのようにしてすすめるべきかについて書かれた本.まずプロトタイプを作り,ちゃんと作りこむ前にしっかり吟味することがすすめられています.プロト作りには何でも活用して,簡単なモックでもよい.こうした話は,今読んでいる「アントレプレナーの教科書」にある顧客開発モデルや,「アジャイルサムライ」のようなアジャイル開発手法の全てに共通して現れることがわかります.何ができるか吟味する,小さな開発サイクルを効率よく回す,顧客と対話する確認する,作り直しを恐れない.大きな失敗をいかに回避できるか,ということがいずれでも主要なテーマとなっています.
また,「技術のコモディティー化」というキーワードもとても興味を引きました.高等教育が進んで,インドや中国も高い技術を持つようになってきて,単に技術レベルだけで勝負できる時代ではないということです.試行錯誤できるかがこれからの製品開発の鍵になるのではないでしょうか.

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)
大竹 文雄

中央公論新社 2010-03
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日本人は,先進国の中でも突出して競争を嫌う傾向にある.公平と競争をキーワードに,様々な調査結果やデータを提示しながら,特に日本人がこれらのキーワードをどう捉えているかが非常に明快に書かれています.他の新書にはなかなか見られないくらい,とても良く既存文献を参考にし,データを的確に引用し,非常に明快な論理を展開していて,それでいて平易に書かれています.派遣切りや,格差社会,医療,教育といった現代社会でとかく争点になるテーマに関しても論理的な切り口で言及されていて,こうした問題を自分がどう捉えるかに関してよい指針になりました.

考えることの科学―推論の認知心理学への招待 (中公新書)考えることの科学―推論の認知心理学への招待 (中公新書)
市川 伸一

中央公論社 1997-02
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「人間の推論」をテーマとして,推論に関わる様々な科学,すなわち記号論理や統計,認知心理学といった様々な視点から議論されています.そして,いずれの学問を持ってしても,人間の「推論」をモデル化するには不十分であることが,様々な実験データからうかがい知ることができます.「言葉」という「推論」とも密接に関わる現象を扱う立場としては,こうした人間の思考に関わる現象にももちろん興味はあります.個人的な立場としては,人間の「模倣」を必ずしもよしとは思いませんが,それをよく観察することは重要だと思っています.

2010年2月10日水曜日

異分子への耐性

金融工学の挑戦―テクノコマース化するビジネス (中公新書)金融工学の挑戦―テクノコマース化するビジネス (中公新書)

中央公論新社 2000-04
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新書を久しぶりに読みました.私は金融工学はまったくの素人なんですが,初学者にも読めるように色々配慮されているように感じました.難しい数式は話半分にしか理解できませんでしたが・・・.
さて,私がこの手の専門領域の方がかかれる新書に期待することは,半分は今書いたような専門分野の入り口の記述で,もう半分がその業界の歴史といいますか,背景といいますか,ノンフィクション的な話です.著者の今野先生は,金融工学という学問が興る,まさにその瞬間を体験した方のようで,「経済学」という学問にいかにして「工学」という異分子が入り込んでいったかのドキュメンタリーが非常におもしろかったです.特に,こうした数式バリバリの手法が経験主義的な既存の経済学にいかに受け入れられなかったか,そしてにもかかわらずいかにインパクトを与えたかという話は非常に興味深い.
これを読んで思うのは,twitterで話題になったことですが,NLPに統計的手法が入り込んできたときに,既存の言語学の先生方がこぞって言語処理学会から消えていったというエピソードです.数学とか統計とか,とかく理工系の学問を新たに体得するというのはかなり大きな障壁があるのは事実ですが,たとえば共同研究するとかやり方は色々あったのではないかと思います.逆に我々も,統計や機械学習だけに固執してしまってはいけなくて,方々に知識の裾野を広げていかないとと常に思います.大学の特に大御所といわれる先生が必ずしも新しいものにnegativeという訳ではなくて,たとえば私の指導教官の先生は話を聞くだけで新しい手法の利点・欠点・特徴,あらゆるものを一瞬で理解してしまう方でした.知識は誰よりも広く,深くはないはずなのに要点は全部押さえているという.マネジメントの能力というのはこういうことを指すのかな,と漠然と思ったものです.
今の職場は,NLPはもとより,言語学から数学から物理から機械学習まで,ドンだけ幅あんねんといういろんなバックグラウンドの方のいる謎グループにいるので,こうした知識をうまく活用したいなぁと日頃から思っている次第.